厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

耳鼻咽喉科問診

聴覚障害や視覚障害の発症時期や障害程度、進行性、補聴効果や視力矯正での状態、療育指導開始時期や内容、効果等の情報を得て状況を正確に把握することが重要です。

そのため、小児では療育者からの情報が必要ですし、成人の場合でも、家族からの情報は非常に有用です。聴覚障害があっても、音声言語の活用が良好な場合や音声言語が困難であっても視覚障害が重度でなく、筆談等の視覚的手段を用いることが可能な場合には筆談を使用する等して問診を進めます。尚、小児期以降では本人からの問診が可能な場合もあります。学校生活での様子は担任教諭からの情報も参考になります。

具体的問診の例(特に重要な例は太字で初めに示しました)

新生児

  • 新生児聴覚スクリーニングを受けましたか。受けている場合には、検査の時期や方法、結果はいかがでしたか。
  • 難聴や視力障害があるご家族はいらっしゃいますか。
  • 難聴や視覚障害の方がいた場合、発症時期や進行性は、どうでしょうか。
  • 心疾患、腎疾患、視力障害、奇形、症候群等を指摘されたことはないですか。
  • 妊娠中に周囲で風疹等の感染症の流行はありませんでしたか。
  • 兄弟がある場合には、同じ頃の兄弟と違う様子はありますか。
  • 祖父母、わかれば曾祖父母まではどうでしょうか。
  • 血縁関係のある遠い親戚にも、難聴の方等はいらっしゃいませんか。
  • お子さんは何か他に病気を指摘されてはいませんか。
  • 周産期歴では変わったことはありませんでしたか。
  • 出生時週数、出生時体重、アプガースコアはどうでしたか。
  • 呼吸障害はありませんでしたか。人工呼吸器や酸素の使用はありましたか。
  • 妊娠中の母体の体調や環境はどうでしたか。
  • 驚愕反射はどうでしょうか。大きな音でびくっとしますか。
  • 音がした時の行動(聴性行動)はどうでしょうか。
  • 扉が閉まる音や掃除機の音、兄弟の声等で眼を醒ますことや、音がして泣き出すことはありませんか。
  • 哺乳や体重増加はどうでしょうか。

乳児(上記に加えて)

  • 音がすると覚醒したり、泣き出したり、表情が変わることはありますか。
  • 音がした方向に目を動かす、キョロキョロする等、音源を詮索する様子はありますか。
  • 音のでるおもちゃを喜んだり、興味を示したりしますか。
  • 動きがあるおもちゃや、光るおもちゃが好きですか。
  • 4ヵ月検診等、乳児健診で特に指摘はありませんでしたか。
  • 歌等、音楽を喜ぶような様子がありますか。
  • 手遊び歌の動きを真似することや、好きな音楽に合わせて体を動かすことはありますか。
  • 好きなTV番組が始まると反応しますか。
  • TVの近くへ行って耳をつけて聞く様子や、じっと見る様子はありますか。
  • 音に反応している印象ですか。目で見たものに反応している印象ですか。
  • 言葉だけの簡単な指示(ごみポイしてきて)等に反応しますか

発達面

  • 定頸、座位、つかまり立ち、独歩、始語が可能になった時期はいつ頃ですか。
  • 話しかけると児も話すように声を出しますか。
  • 言葉を聞かせた時に模倣して言おうとしますか。
  • 哺乳は良好ですか。離乳食はいつ頃から始まっていますか。よく食べますか。
  • 体重増加はどうでしょうか。
  • あやすと笑う、泣き止む等の反応がみられますか。
  • 普段から児と目は合いますか。
  • 後ろからの声かけにも反応しますか。顔が見えた時だけ反応しますか。
  • 発声や発語はどうでしょうか。
  • アーウーだけですか、それ以外にもマママ、パパパの音も出しますか。
  • 喃語がさかんでしょうか。何か意味のある単語(有意語)もでていますか。
  • 声や動きを模倣することがありますか。
  • 絵本を読んであげると喜びますか。
  • 本児の聞こえについて家族が心配に思うことはありますか。
  • 他の兄弟や同年齢の児に比べて違うと思うところや不安がありますか。

幼児(上記に加えて)

  • 4ヵ月検診、1歳6ヵ月検診、3歳児検診等で特別な指摘は無かったですか。
  • 音の方向を向かなくても、音の方向へ眼を動かす、キョロキョロする等の音源を詮索する様子はありますか。
  • 音の意味を分かっている様子がありますか。例えば、飛行機の音がして空を指さして見上げる、扉の開閉の音で家族の帰宅に気づき扉まで行く等。
  • 言葉はよく話しますか。単語は増えていますか。
  • 声によく反応しますか、それとも目で見たものに反応しやすい印象ですか。
  • 指さしはよくしますか。指さししながら声を出しますか。
  • 単語をつなげて、簡単な文章で話しますか。単語はいくつつながりますか。
  • 聞き返しが多いことはありませんか。
  • 言い間違えや覚え間違いはありませんか。(年中から年長児)
  • 大きな声には反応するのに小さな声では反応しないことはないですか。
  • 周囲に雑音があるところでは、話しかけに気づかないことはありませんか。
  • 徐々に音への反応が鈍くなってきた印象はないですか。
  • 発語が少なくなり、話さなくなってきたという変化はみられませんか。

発達面

  • 定頸、座位、独歩、始語、二語文が可能になった時期はいつ頃ですか。
  • コミュニケーションモードは何でしょうか。
  • 音声言語を使用していますか。ジェスチャーのみでしょうか。
  • おままごと等、ごっこ遊びをしますか。
  • 歩行可能な場合、尖足はありませんか。
  • 歩行時に片足のみ踏み外しやすい等はありませんか。
  • あやすと笑う、泣き止む等の反応は過去にありましたか。
  • 言葉の発達についてはどうでしょうか。有意語はでているでしょうか。
  • 有意語の発語がある場合、単語は具体的名称のみでしょうか。
  • 数の概念や抽象語の理解(多い、少ない、寒い、暖かい等)はどうですか。分類を示す言葉(野菜、食物、動物等)を理解していますか。
  • 手話やキュードスピーチ等の視覚的手段が必要でしょうか。
  • 手指文字等、触覚を活用した手段が必要でしょうか。
  • 構音不明瞭さはどうでしょうか。(年中~年長児)
  • 同程度の年齢の他児と遊びますか。
  • 兄弟や同年齢の児と違いがある等、家族が不安に思うことはないでしょうか。

小児(上記に加えて)

  • 4ヵ月検診等、乳児健診で特に指摘はありませんでしたか。
  • 難聴の診断があり判明していれば原因は何でしたか。
  • 既に難聴がある場合、補聴器装用ですか、人工内耳装用ですか、補聴せずに手話等で生活していますか、療育指導や教育はどこで受けていますか。
  • 音がした方向にしっかり振り向きますか。後ろからの音にも気づきますか。
  • 既に難聴を指摘され、原因検索を受けていますか。
  • 歌を真似たり、好きな音楽に合わせて体を動かしたりしますか。
  • 好きなTV番組が始まると反応しますか。近くに行きたがりますか。
  • 音のでるスピーカー等に耳をつけて聞く様子がありますか。
  • TVのボリュームを大きくして聞く様子はありませんか。
  • TVをじっと見る様子がありますか。
  • 周囲に雑音があるところでは聞こえにくそうな様子があるか。
  • 学校等で周囲の様子を見て動く様子がありませんか。
  • 言葉だけの指示では聞き取りにくく、わからないことは無いでしょうか。

発達面

  • 過去には言葉を話していたものの、徐々に減り発語が消失してしまったということはないでしょうか。消失してしまった場合、いつ頃でしょうか。
  • 日常の生活環境(学校や家庭等)において困ることは無いですか。
  • アーウー等の発声だけでしょうか。
  • 過去に発語があった場合、単語のみでしたか。二語文、三語文等連鎖がみられていましたか。
  • 発語がある場合には、語彙が増えてきていますか。
  • 分類を示す言葉(野菜、食物、動物等)を理解していますか。
  • 聞いて覚えることは得意でしょうか。
  • 書字での確認の方が理解しやすいでしょうか。
  • 絵やイラスト等を提示した方が伝わりやすいでしょうか。
  • 目で見て完成できるパズルや図形の問題は得意でしょうか。
  • 視線は合いますか。
  • 勉強は好きですか。
  • 好きな科目は何ですか。その理由を説明できますか。
  • 好きなスポーツや習い事等は何でしょうか。

成人

  • これまでの健診の結果(聴力や視力の異常等指摘の有無)はどうでしょうか。
  • 既往歴(難聴や視覚障害、奇形、症候群)の指摘を受けたことはありますか。
  • 既に難聴や視覚障害を指摘されている場合、いつ頃からでしょうか。
  • 難聴や視覚障害の診断がある場合、原因が判明していますか。
  • 周産期歴(出生時体重・週数、呼吸障害の有無、酸素や人工呼吸器使用の有無、妊娠中の母体の体調や環境について(風疹等感染症の流行の有無等)はどうでしたか。
  • 聴力検査を過去に受けたことがありますか。結果はどうでしたか。
  • 難聴の場合、補聴器装用ですか、人工内耳装用ですか、それとも補聴せずに手話等で生活していますか。療育指導や教育はどこで受けましたか。

聴性行動

  • 音源を詮索する様子がありますか。
  • 現在の生活環境(職場や家庭等)で困ることはないですか。
  • コミュニケーションモードは何ですか。
  • 日常の生活環境(職場や家庭等)において困っていることは無いですか。
  • 音や声がした方向を向いたり、眼を動かす、キョロキョロする等、過去には音源検索をする様子があったものの、今は音がしても音の方向を向くことは無く、表情が変わることも無い等、変化を生じていますか。
  • 乳幼児期に驚愕反射や音源詮索(音への振り向き等)はありましたか。
  • 周囲の雑音下では声に気づけない、聞き取れないことは無かったですか。
  • 言葉の指示や伝達がわからず、周囲の人の様子を見て動くことは無かったですか。
  • 静かな部屋で1対1であれば会話可能ですが、複数の人と話す状況では聞き取りにくいということはありませんか。
  • 大きな音はわかるが小さな音は聞こえないということはありますか。
  • 音楽は好きですか。
  • 音楽に合わせてリズムを刻む等、体を動かしたりしますか。
  • TVや音楽のボリュームを大きくして聞きたがることは無いですか。
  • 音声言語、読唇併用、手話や筆談等の視覚的言語のいずれかでしょうか。手指文字等の触覚利用が必要でしょうか。
  • 会話の際に視線が合うでしょうか。
  • これまでの発達の様子はどうでしたでしょうか。
  • 定頸、独歩、始語、二語文が可能となった時期はいつ頃ですか。
  • 徐々に発語が消失したことは無かったでしょうか。
  • 歩行は自由に可能でしょうか。
  • 構音の歪は無いでしょうか。
  • 会話が家族以外の第三者に伝わりにくいことはないでしょうか。
  • 言葉での指示を覚えることは得意でしょうか。
  • 書字等で確認した方が理解しやすいでしょうか。
  • 絵やイラスト等の提示の方が理解しやすいでしょうか。
  • パズルや図形等の問題が得意でしょうか。
  • 学生時代の勉学の様子はどうでしたか。(得意科目や不得意科目等)
  • スポーツ等好んで行っていることがありますか。
  • 興味があることは何でしょうか。
  • 学業や仕事等現在の環境はどうですか。従事している内容は何でしょうか。

聴覚障害のみの患者

新生児

受診経緯を問診します。

新生児の大半は新生児聴覚スクリーニングでreferの結果による受診が多いです。このため、新生児聴覚スクリーニングの有無と結果を確認し、行っていれば使用機器、検査時期と検査回数も確認しておく必要があります。

音への反応がどうか保護者に確認するにあたって、保護者はイメージがつきにくいため扉を閉める音で泣いたりドライヤーの音で泣きやんだりなどの反応がどうか具体的に問診するとスムーズです。また、田中、進藤式の聴覚発達チェックリストを用いて月齢に応じて発達を確認するのも良い方法です。

出生歴を確認します。難聴のハイリスク因子の確認のため分娩時体重、分娩方法(吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開など)、アプガースコア、挿管、人工換気の既往などを問診し、あわせて新生児黄疸、外表奇形などの合併症も確認します。

周産期歴の確認をします。母の感染症の既往(風疹など)、母の薬物使用はあったかなど
家族歴の確認をします。難聴の家族歴があるか、また遺伝性疾患の検討のためにも心疾患、腎疾患や眼疾患などの家族の有無の詳細な問診が後の原因診断で役立つことがあります。

乳児 幼児

基本的には乳児の問診内容に準じて行います。

既往歴を確認します。髄膜炎などの難聴をきたす疾患などが重要です。
成長に伴い発達の問題がないか確認する必要があります。

定頚や独歩の時期はいつか、もし遅れがある場合はどの程度の遅れがあるのかを確認します。また言語に関しては喃語、二語文などの言語の表出は何歳程度か、表出が遅れている場合は言語理解は年齢相応であるかどうかを問診で推測します。

集団生活をしている児では、園での状況を確認し自閉傾向がどうか問診にて検討する必要があります。

年齢とともに後天性聴覚障害の患者さんの受診もあるため経過中、発達の後退がなかったかなども重要です。先天性CMV感染症では言語発達の後退に伴い難聴の悪化を伴う症例も散見されます。

小児

学童期に入ると自覚症状がはっきりしてくる子もいるため、難聴の時期、左右、その他、耳閉塞感、耳鳴、めまいなどの症状を確認することもできるようになります。

また、8歳前後では機能性難聴の患者さんも訪れることが多いため学校での環境、家族関係などのストレスがないかなども問診する必要があります。またムンプスなどの予防接種は行なっているかなどの成育歴も確認します。

就学前検査結果も参考になります。

成人

難聴の状況の詳細な問診をとります。
既往歴の確認をします。糖尿病、腎疾患、頭部外傷などが重要です。

ホーム > 患者・医療者に役立つ医療関連情報 > 診療マニュアル > 耳鼻咽喉科問診