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先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

コケイン症候群

疫学

100万出生あたり2.77人(95%信頼区間2.19-3.11)1)とされています。これは、西欧でも2.7人/100万人との報告もあり、頻度はほぼ変りません。

原因

DNA修復に関与するCSA、CSB遺伝子の異常によって発症する常染色体劣性遺伝性疾患で、紫外線に感受性が高いです。一部は色素性乾皮症の原因となるXPB、XPD、XPG遺伝子異常によって発症します。

視覚障害の自然歴

本症には両眼性の白内障、網膜色素変性症、視神経萎縮、涙液減少などの眼症状が小児期から進行し、高度の視力・視野障害をきたします。
白内障は48%~65%と高頻度にみられ、大部分は4歳までに発症します。特徴的なごま塩眼底を示す網膜色素変性症は43%~90%に、視神経萎縮は約半数にみられます。また眼球陥凹を97%以上に、羞明を90%以上に認めます1)、2)、3)。いずれも進行性であり難治性です。

聴覚障害の自然歴

主に高音域の両側感音難聴が2-3歳頃から出現し、約80%は進行性・遅発性に聴力が低下していきます2)。聴性脳幹反応(Auditory brainstem response; ABR)では閾値上昇とⅢ波以降の潜時延長を認め、蝸牛神経と脳幹部を含む聴覚伝導路の退行性病変(後迷路性難聴)と内耳の変性(感音難聴)による聴覚障害です6)

眼科診療の注意点

全身的な管理と併せて、視覚障害に対し乳幼児期から継続した診療が必要です。

視機能は固視・追視のほか、視覚誘発電位、網膜電図、PL法などによって評価します。白内障の進行に対し手術治療を行うことがありますが、他の眼疾患を伴うため術中・術後管理が難しいです。保有視機能を活用するために、補聴器と併用可能な屈折矯正眼鏡を作成したり、屋内外で利用する遮光眼鏡を作成するとよいです。網膜色素変性症や視神経萎縮に対する効果的な治療法は今のところありません。涙液減少に対しては点眼薬(人工涙液)を処方し、重篤な角膜障害や角膜穿孔を起こさないように注意が必要です5)

耳鼻咽喉科診療の注意点

  • (1)聴力検査
    聴力検査は知的障害があるため反応をとらえるのが難しいです。知能障害および難聴に伴う言語発達の遅れと小脳性の構音障害を伴うため、難聴そのものの評価にはABRなどを併用して行う必要があります4)。しかし、髙周波数領域が特に低下するため、ABRの反応が悪く、ABRの結果と実際の聴力には乖離がみられることもあります。このため、むしろASSRの方が聴力評価には有用でしょう。

  • (2)補聴器装用
    補聴器装用により音への反応は改善するため、難聴が見つかった時点で補聴器装用などは積極的に行います。しかし、成長障害や腎機能低下などがある場合は、集団における難聴指導や療育は困難です。

文献

  • 1) Kubota M, Ohta S, Ando A, et al: National survey of Cockayne syndrome in Japan: Incidence, clinical course and prognosis. Pediatr Int 2015;57:339-347.
  • 2) Karikkineth AC, Scheivye-Kundsen M, Fivenson E, et al: Cockayne syndrome: Clinical features, model systems and pathways. Aging Research Reviews http://dx.doi.org/10.1016/j.arr.2016.08.002
  • 3) Wilson BT, Stark Z, Sutton RE, et al: The Cockayne Syndrome Natural History (CoSyNH) study: clinical findings in 102 individuals and recommendations for care. Genet Med 2016;18:483-493.
  • 4) 久保田雅也:コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究.厚生労働科学研究(難治)平成23年度総括・分担研究報告書
  • 5) Yamaguchi K, Okabe H, Tamai M: Corneal perforation in a patient with Cockayne’s syndrome. Cornea 1991;10(1):79-80.

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