福祉・生活支援
福祉との連携
視覚聴覚二重障害が生ずることで、その本人は以下の3つの困難や制約を複合して経験すると言われています。
(1)コミュニケーション | 身近な他者とのコミュニケーション、及びマスメディアを含めたあらゆる言語的情報の入手 |
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(2)情報入手 | 他者とのコミュニケーションや外部環境(周囲の状況)の把握にともなう言語以外の視覚的・聴覚的情報の入手 |
(3)移動 | 戸外での歩行や交通機関を用いての移動 |
これらの視覚聴覚二重障害者が抱える困難を解消し、自立と社会参加を実現するためには、視覚・聴覚の残存機能の活用や代替手段の獲得のための「生活訓練」や「補助具・支援機器」、盲ろう者向け通訳・介助員派遣や同行援護等の「人的支援サービス」といった福祉に関する社会資源の活用が必要です。
視覚聴覚二重障害が生じることにより、単独ではこれらの社会資源についての情報が得られず、またサービスの利用までの手続きなどにも困難があり、結果として、「衣食住のみの支援を家族が行い、本人は家に閉じこもったまま生活を送る」といったケースも少なくありません。そのため、医療と福祉との連携は、本人のその後の生活を支えるうえで重要な支援になると言えます。
日常生活を支える福祉サービスや生活支援
(1)自立訓練
視覚・聴覚の残存機能の活用や代替手段の獲得のためのリハビリテーションとして、盲ろう者や視覚障害者の支援機関等により、各種の訓練が実施されています。
(1)コミュニケーション訓練 | 点字の読み書き、触手話・指点字等のコミュニケーション方法等を学びます。 |
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(2)IT訓練 | 拡大読書器やパソコンによる情報入手の方法を学びます。パソコンでは、文字を拡大する機能や、点字ディスプレイを利用したパソコンの使い方などを習得します。 |
(3)歩行訓練 | 白杖の操作方法、階段の上り下り、電車やバスの利用方法など、安全に安心して外出するために、単独歩行の技術を学びます。 |
(4)身辺管理・家事管理訓練 | 日々の生活を送るうえで必要な動作をスムーズにするための訓練です。「電子レンジや便利グッズを活用した調理」、「ルーペを活用した賞味期限などの確認」、「お札や硬貨の識別・仕分け」など、内容はさまざまです。 |
※事業所により、提供している訓練内容に違いがあります。
(2)補装具・日常生活用具
1)補装具
① 白杖 | 歩く先の安全を確かめる杖。路上の障害物を認識しやすくなるとともに、周囲の人が存在に気づいて道をあけ、人通りの多い場所でも歩きやすくなります。携帯性に優れた折りたたみ式の白杖もあります。 |
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② 眼鏡・ルーペ | まぶしさの原因となる光だけをカットする遮光眼鏡や、ライト付きで見たいものを明るく照らしながら見ることができるルーペなどがあります。 ※ルーペが補装具として認められるかは市区町村によって異なります。 |
③ 補聴器 | 身につけることによって、失われた聴覚機能を補います。補聴器にはさまざまな機能・形状があり、購入にあたっては、耳鼻科医や言語聴覚士、認定補聴器店の補聴器技能者などに相談して決めるのがいいでしょう。 |
2)日常生活用具
① 盲人用時計 | 短針と長針を触って時刻を確認します。振動により時刻を知らせる時計もあります。 |
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② 拡大読書器 | 読みたい部分を拡大するとともに、色を反転させる機能もあります。据え置き型のほか、携帯できるタイプがあります。 |
③ 点字盤・点字タイプライター | 点字を打つ際に使用する点字盤と、より効率的に点字を打つためのタイプライターがあります。 タイプライターのうち、ブリスタというドイツ製の速記用点字タイプライターは、点字の触読が可能な全盲ろう者とのコミュニケーションの際にも用いられます。 |
④ 点字ディスプレイ | パソコンに接続し、テキストデータを点字で表示する機器です。文書の処理のほか、電子メールやWeb サイトの閲覧などにも利用可能です。 |
⑤ 電磁調理器 | ガスや火を使わず、電力だけで作動するため、視覚の活用が難しくても安全に調理をすることが可能です。 |
⑥ 屋内信号装置 | 来客時のチャイム音、電話やファックスの着信音、乳幼児の泣き声、時計のアラームなどを、振動で知らせます。 |
(3)人的支援サービス
1)訪問系サービス
① 盲ろう者向け通訳・介助員派遣 |
視覚聴覚二重障害者を対象として、移動やコミュニケーション、情報入手のための支援を提供する通訳・介助員を派遣する制度です。 通院や診察、役所での手続き、買い物や余暇活動など、様々な場面に通訳・介助員が同行し、移動の介助をするとともに、コミュニケーション方法に合わせた通訳や視覚的情報を提供します。 自治体(都道府県・政令指定都市・中核市)により利用できる時間数が異なります。年間100 時間から1000 時間程度までばらつきがありますが、全国平均は年間200 時間程度です。 |
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② 同行援護 |
視覚障害者を対象とした、移動や情報入手のための支援を提供する同行援護従業者を派遣する制度です。 2018年4月より、盲ろう者向け通訳・介助員による支援も加えられ、盲ろう者も円滑に利用しやすくなります。 市町村単位で実施され、本人のニーズや在住地域により、差はありますが、月50 時間ほどの利用が可能とされています。 |
③ ホームヘルプ(居宅介護・訪問介護) | 自宅での身体介護(入浴・排泄・移乗など)や生活援助(調理・掃除・洗濯など)、生活全般についての支援を提供します。 |
④ 居宅訪問型児童発達支援 | 児童発達支援や放課後等デイサービスといった児童通所施設・事業所への通所が困難な重度の障害児に対し、自宅に訪問し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、生活能力の向上のために必要な訓練等を提供します。 |
2)通所系サービス
① 生活介護 | 日中、施設において、創作的活動や生産活動の場を設けつつ、必要に応じて、入浴や排泄、食事などの介護を行います。 |
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② 就労移行支援 | 一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を行います(原則2年間)。 |
③ 就労継続支援(A型) | 一般企業等での就労が困難な人に、雇用して就労の機会を提供するとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行います。 |
④ 就労継続支援(B型) | 一般企業等での就労が困難な人に、就労する機会を提供するとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行います。 |
⑤ 児童発達支援 | 就学前の障害児に対し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練等を提供します。 |
⑥ 放課後等デイサービス | 学齢期の障害児に対し、授業の終了後又は休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進等を提供します。 |
福祉サービスの窓口
(1)市町村
自立訓練や補装具・日常生活用具の費用の給付、各種人的支援サービスは、市町村の障害福祉課が窓口になります。また、人的支援サービスのうち小児向けのサービスは市町村の児童家庭課が窓口になります。利用意向について相談した後、利用を希望するサービスによっては、「相談支援事業所」の支援を受けるなどして、サービスの利用計画を作成する必要があります。
(2)相談支援事業所
障害児・者を対象に、サービスの利用計画の作成の支援をするのが、相談支援事業所です。訪問や通所のサービスを利用するにあたり、サービス等利用計画や障害児支援利用計画といった書面を作成し、市町村に提出する必要があります。相談支援事業所は、本人や家族の意向やどのような生活を実現したいかを聞き取りながら、利用計画を作成します。
(3)通訳・介助員派遣事業 派遣事務所
訪問系の人的支援サービスのうち、視覚聴覚二重障害者に最も活用されているのが「盲ろう者向け通訳・介助員派遣」です。
この事業は都道府県の委託を受け、盲ろう者団体、聴覚障害者団体等が設置している「派遣事務所」が運営しています。「盲ろう者向け通訳・介助員派遣」の利用申込については、派遣事務所が窓口になります。
(4)地域盲ろう者団体
地域盲ろう者団体は現在、46都道府県に存在しています。
その中には、通訳・介助員派遣事業や同行援護事業などを運営・実施するとともに、盲ろう者に対する生活訓練や通所系サービスを実施している団体もあります。
また、多くは盲ろう者を対象とした交流会を開催しており、同じ障害を持つ「仲間」と出会う機会にもなっています。
視覚聴覚二重障害のある方が利用できる福祉サービス
多くの障害者関連のサービスは、障害者手帳を所持する方を対象としています。
身体障害者手帳を取得するには、身体障害者福祉法に定められた障害程度等級に該当する必要があります。診断する資格のある医師に診断を受け、都道府県、政令指定都市、中核市に申請書類を提出することで、各自治体から交付されます。
身体障害者手帳の制度では、視覚聴覚二重障害(盲ろう)という障害名はありません。視覚障害、聴覚障害それぞれについて診断を受けることになります。
身体障害者手帳で受けられる主なサービス
サービス | 内容 |
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手当の交付 | 特別障害者手当、障害児福祉手当など |
公共料金の減免 | NHKの受信料、携帯電話の通信料など |
交通機関の割引 | JR、私鉄、民営バス、タクシーなど |
税金の控除 | 住民税、所得税、自動車税など |
移動費の助成 | タクシー券の交付、自動車燃料費の助成など |
医療費の助成 | 保険診療の自己負担分を助成 |
障害者総合支援法におけるサービスの受給 | 通訳・介助員派遣、同行援護、居宅介護、補装具、日常生活用具、自立支援医療など |
なお、障害者総合支援法においては、身体障害者手帳がない難病の人も、サービスの利用対象者に含んでいます。対象となる疾病は、令和3年11月現在、366疾病です。たとえば、視覚聴覚二重障害の原因として頻度の高い、アッシャー症候群やチャージ症候群についても障害者総合支援法の対象疾病になっています。これらの疾病の方は身体障害者手帳の交付を受けていなくても、障害者総合支援法に規定されたサービスが受けられることになります。
参考
関連団体
(1)全国団体
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全国盲ろう者団体連絡協議会
http://tarzans.sakura.ne.jp/jfdb/
03-5993-4396
-
社会福祉法人 全国盲ろう者協会
03-5287-1140
03-5287-1141
-
盲ろうの子とその家族の会 ふうわ
042-230-5766
-
全国盲ろう教育研究会
046-839-6844
046-839-6909
-
NPO法人全国盲ろう児教育・支援協会
03-5287-1140
03-5287-1141
(2)各地の盲ろう者友の会(盲ろう当事者団体)
北海道地区
-
札幌盲ろう者福祉協会
011-611-2622
東北地区
-
岩手盲ろう者友の会
090-6781-5054
019-606-1747
-
みやぎ盲ろう児・者友の会
022-262-1383
-
秋田盲ろう者友の会
018-866-2565
-
山形県盲ろう者友の会
0235-66-2909
-
福島盲ろう者友の会
024-522-5771
関東地区
-
茨城盲ろう者友の会
0297-52-2297
-
栃木盲ろう者友の会「ひばり」
http://hibari.world.coocan.jp/
028-621-0860
-
NPO 法人群馬盲ろう者つるの会
0276-60-3900
-
埼玉盲ろう者友の会
http://www.normanet.ne.jp/~sai-db/
048-833-4004
-
NPO 法人千葉盲ろう者友の会
043-310-3008
-
認定NPO 法人東京盲ろう者友の会
03-3864-7003
03-3864-7004
-
神奈川盲ろう者ゆりの会
http://kanagawa-db-yurinokai.com/
0466-77-5804
北陸・甲信越地区
-
新潟盲ろう者友の会
0254-24-8312(今田)
025-383-6550(佐伯)
-
富山盲ろう者友の会
076-441-7331
076-441-7305
-
石川盲ろう者友の会
076-232-5205
076-232-5206
-
福井盲ろう者友の会
0778-62-1234
0778-62-0890
-
山梨盲ろう友の会
055-269-6694
055-269-6695
-
長野県盲ろう者友の会
0263-36-0365
0263-39-1540
-
ながの盲ろう者りんごの会
026-274-3477
東海地区
-
岐阜盲ろう者友の会
http://www.normanet.ne.jp/~gifu_db/
058-247-7321(夜間のみ)
058-254-2554
-
静岡盲ろう者友の会
054-345-0296
-
愛知盲ろう者友の会
052-228-6661
-
三重盲ろう者きらりの会
059-223-3302
059-223-3301
関西地区
-
NPO 法人しが盲ろう者友の会
0748-31-2522
0748-31-2523
-
京都盲ろう者ほほえみの会
075-462-1008
-
NPO 法人大阪盲ろう者友の会
06-6576-1200
06-6576-1201
-
NPO 法人兵庫盲ろう者友の会
078-341-8822
-
奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」
0743-73-0629
-
NPO 法人和歌山盲ろう者友の会
073-498-7756
中国地区
-
鳥取盲ろう者友の会
0859-30-3830
0859-21-1537
-
しまね盲ろう者友の会
0852-24-9948
0852-24-7337
-
岡山盲ろう者友の会
086-227-5004
-
広島盲ろう者友の会
082-253-5469
-
山口盲ろう者友の会
http://ww5.tiki.ne.jp/~rabbit-tk/
083-924-6397
四国地区
-
徳島盲ろう者友の会
088-635-5093
088-635-5096
-
香川盲ろう者友の会
0877-28-5480
-
NPO 法人えひめ盲ろう者友の会
http://tarzans.sakura.ne.jp/tomonikai/
090-7780-8404
089-926-0274
-
高知県盲ろう者友の会
088-884-3794(浪越)
088-803-4057(高橋)
九州地区
-
福岡盲ろう者友の会
092-327-4533
-
佐賀盲ろう者友の会
0952-22-1510
-
長崎盲ろう者友の会“あかり”
095-847-2681
095-847-2572
-
熊本盲ろう者夢の会
096-387-4944
-
大分盲ろう者友の会
097-568-8793
-
宮崎県盲ろう者友の会
090-2505-5547
0985-20-0655
-
NPO 法人鹿児島県盲ろう者友の会 いぶき
099-203-0258
沖縄地区
-
沖縄盲ろう者友の会
090-2505-5547(宮里)
098-993-7622(事務局)
(3)各地の関連施設
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東京都盲ろう者支援センター
(主な活動:各種相談、訓練、社会参加促進、通訳・介助員派遣・養成等)03-3864-7003
03-3864-7004
-
神奈川県盲ろう者支援センター
(主な活動:各種相談、通訳・介助員派遣・養成等)https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/mourou/center.html
0466-90-5727
-
地域作業所 わくわくわーく(神奈川県)
(主な活動:地域活動支援センター)http://wakuwakuwa-ku.life.coocan.jp/
045-313-1134
-
滋賀県盲ろう者支援センター
(主な活動:訓練、各種相談、社会参加支援、通訳・介助員派遣・養成等)0748-29-3661
0748-29-3662
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NPO法人ヘレンケラー自立支援センター(大阪府)
(主な活動:就労継続支援B型、グループホーム、通訳・介助者派遣、同行援護事業、各種相談等)06-6776-2000
06-6776-2012
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生活介護事業所 手と手とハウス(大阪府)
(主な活動:生活介護)http://oosakadb.la.coocan.jp/tetoteto.html
06-6585-3031
06-6585-3035
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盲ろう者等社会参加支援センター(大阪府)
(主な活動:生活訓練、各種相談、社会参加促進、通訳・介助員派遣・養成等)http://osakacommunication.com/mourousya/
06-6748-0588
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ひょうご盲ろう者支援センター(兵庫県)
(主な活動:生活訓練、各種相談、通訳・介助員派遣・養成等)078-341-8822
-
地域活動支援センター 夢ふうせん(兵庫県)
(主な活動:地域活動支援センター)078-521-0555
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アイラブ作業所(広島県)
(主な活動:就労継続支援B型、生活介護)082-248-0336
082-236-1144
-
鳥取県盲ろう者支援センター
(主な活動:相談等)0859-30-3830
0859-21-1537
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NPO法人 聴覚・ろう重複障害者生活支援センター(徳島県)
(主な活動:地域活動支援センター、同行援護事業)https://chosei-center.wixsite.com/tokushima
088-635-5093
088-635-5096