教育機関との連携
視覚聴覚二重障害児の医療では、教育との連携が極めて重要です。このため現在の国内の視覚聴覚二重障害児教育の状況を以下に概説します。
就学前の乳幼児からの教育相談・支援を行っている機関
視覚障害を対象とする視覚特別支援学校(盲学校)、聴覚障害を対象とする聴覚特別支援学校(聾学校)の多くに、3・4・5歳児を対象とする幼稚部が設置されています。
そして、3歳前の乳幼児からの相談支援も行っています。また、2012年4月に児童福祉法が改正され、どのような障害があっても、子どもたちが住み慣れた地域で暮らせることを支援するために、児童福祉法による「児童発達支援事業」に一元化されサービスを幅広く利用することができるようになりました。
児童発達支援には、児童福祉施設として定義された「児童発達支援センター」と、それ以外の「児童発達支援事業」の2つがあり、就学前の子どもたちと家族の支援を行っています。具体的には、以下の機関で就学前からの教育相談・支援を行っています。
全国の聴覚特別支援学校
保健所
児童発達支援センター
児童発達事業所
就学先機関
盲ろうの子どもたちのほとんどは、特別支援学校に就学しています。まれに、通常の小・中学校に設置された特別支援学級に在籍しているケースもありますが、弱視難聴や急激に視力や聴力が落ちたケースなどがみられます。特別支援学校は、全国に1,100校程あります。学校教育法施行令第22条の3で、特別支援学校の対象とする障害の程度を以下の通り、規定しています。
視覚障害者 | 両眼の視力がおおむね0.3未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの |
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聴覚障害者 | 両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの |
知的障害者 |
1 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの 2 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの |
肢体不自由者 |
1 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの 2 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの |
病弱者 |
1 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの 2 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの |
これらの特別支援学校には、重複障害についての規定はなく、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱を対象とする各特別支援学校に、視覚と聴覚の両方に障害のある盲ろうの幼児児童生徒は在籍しています。また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、特別支援教育に関する研究活動や研修事業、情報収集・発信及び理解啓発を推進しています。視覚聴覚二重障害(盲ろう)に関する研修事業や情報提供等も行っています。
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全国特別支援学校長会
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
046-839-6844
特別支援学校に在籍している幼児児童生徒の実態
平成29年度に、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所では、全国の特別支援学校1,025校(分校、分教室については、本校で集約を依頼)を対象に、盲ろう幼児児童生徒の実態調査を実施し、828校から回答を得ました(回収率80.8%)。なお、調査の対象となる幼児児童生徒の視覚障害及び聴覚障害の状態については、特別支援学校の対象となる「学校教育法施行令22条の3」を基準とし、視覚障害及び聴覚障害の他に、知的障害、肢体不自由、病弱など他の障害を併せ有する幼児児童生徒も対象としました。以下は、調査結果の概要です。
(1)盲ろう幼児児童生徒の在籍校について
①在籍している特別支援学校
在籍している | 166校 |
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在籍していない | 662校 |
②在籍している特別支援学校の対象とする障害種と在籍者数
※( )内は在籍幼児児童生徒数
視覚障害 | 28校(54人) |
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聴覚障害 | 20校(33人) |
知的障害 | 27校(39人) |
肢体不自由 | 26校(54人) |
病弱 | 5校(11人) |
視覚障害・知的障害 | 1校(1人) |
視覚障害・病弱 | 1校(1人) |
聴覚障害・知的障害 | 3校(8人) |
知的障害・肢体不自由 | 26校(56人) |
知的障害・病弱 | 2校(3人) |
肢体不自由・病弱 | 4校(6人) |
聴覚障害・知的障害・肢体不自由 | 1校(1人) |
知的障害・肢体不自由・病弱 | 3校(3人) |
視覚障害・聴覚障害・知的障害・ 肢体不自由 | 4校(8人) |
視覚障害・聴覚障害・知的障害・ 肢体不自由・病弱 | 10校(28人) |
無回答 | 5校(9人) |
(2)在籍する盲ろう幼児児童生徒について
①盲ろう幼児児童生徒在籍者数
男 | 170人 |
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女 | 142人 |
無回答 | 3人 |
合計 | 315人 |
②在籍幼児児童生徒の内訳
幼稚部 | 7人 | 教育相談 | 31人 |
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小学部 | 141人 | 幼児 | 24人 |
中学部 | 78人 | 小学生 | 5人 |
高等部 | 48人 | 中学生 | 0人 |
高等部専攻科 | 10人 | 高校生 | 2人 |
(3)視覚障害について
①視覚障害の状態について
測定視力及び日常の見え方の様子から、全盲、弱視の判断をした。
全盲 | 87人 |
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弱視 | 185人 |
不明・測定不能 | 34人 |
無回答 | 9人 |
なお、日常の見え方の様子については、以下の定義とした。
全盲 | 光も感じない 明るい光は見える |
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弱視 | 目の前で手を動かせばわかる 目の前の指の本数が数えられる 大きな文字を読める 小さな文字を読める |
②視覚障害の原因
未熟児 | 39人 |
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CHARGE 症候群 | 37人 |
中枢性障害(皮質盲等) | 7人 |
ダウン症候群 | 5人 |
アッシャー症候群 | 4人 |
サイトメガロウイルス感染症 | 4人 |
先天性風疹症候群 | 3人 |
事故 | 3人 |
髄膜炎 | 2人 |
その他(網膜色素変性症、緑内障、 自傷、小眼球、脳性マヒ、 コケイン症候群、先天性疾患 等) | 93人 |
不明 | 98人 |
③普段使用している補装具等(複数回答可)
眼鏡 | 83人 |
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遮光眼鏡 | 14人 |
単眼鏡 | 13人 |
拡大レンズ | 11人 |
拡大読書器 | 8人 |
その他(タブレット端末 等) | 22人 |
なし | 183人 |
(4)聴覚障害について
①聴覚障害の状態について
測定聴力及び日常の聞こえ方の様子から、ろう、難聴の判断をした。
ろう | 28人 |
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難聴 | 237人 |
不明・測定不能 | 41人 |
無回答 | 9人 |
なお、日常の聞こえ方の様子については、以下の定義とした。
ろう | 話し声を全く聞き取れない |
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難聴 | 耳元で大声なら聞き取れる 少し離れても大声なら聞き取れる 少し離れても普通の話し声を聞き取れる |
②聴覚障害の原因
CHARGE 症候群 | 37人 |
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未熟児 | 27人 |
サイトメガロウイルス感染症 | 5人 |
ダウン症候群 | 5人 |
中枢性障害 | 4人 |
先天性風疹症候群 | 3人 |
アッシャー症候群 | 3人 |
事故 | 3人 |
その他(脳性マヒ、4P- 症候群、 コケイン症候群、コルネリア・ デ・ランゲ症候群、ティサックス病 等) | 45人 |
不明 | 151人 |
③普段使用している補装具等(複数回答可)
補聴器 | 162人 |
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人工内耳 | 17人 |
FM補聴システム | 8人 |
その他(デジタル補聴援助システム 等) | 7人 |
なし | 108人 |
(5)盲ろうのタイプ(見え方と聞こえ方の組合せ)
全盲ろう | 11人 |
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全盲難聴 | 61人 |
弱視ろう | 17人 |
弱視難聴 | 157人 |
測定不能・不明 | 61人 |
無回答 | 8人 |
(6)視覚と聴覚以外の障害の有無
視覚と聴覚以外の障害はない | 44人(14.0%) |
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視覚と聴覚以外の障害がある | 271人(86.0%) |
【内訳】
知的障害・肢体不自由 | 117人 |
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知的障害 | 56人 |
知的障害・肢体不自由・病弱 | 40人 |
肢体不自由 | 32人 |
知的障害・肢体不自由・その他 | 6人 |
知的障害・その他 | 5人 |
知的障害・肢体不自由・病弱・その他 | 2人 |
知的障害・病弱 | 2人 |
肢体不自由・病弱 | 1人 |
病弱 | 1人 |
肢体不自由・その他 | 1人 |
その他(呼吸器機能障害、発達障害 等) | 8人 |
(7)医療的ケアについて
①医療的ケアの必要性について
医療的ケアが必要である | 136人 |
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医療的ケアは必要ない | 171人 |
無回答 | 8人 |
②医療的ケアの種類(複数回答)
経管栄養 | 95人 |
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口腔・鼻腔内吸引 | 67人 |
気管切開部の管理 | 25人 |
人工呼吸器 | 16人 |
酸素療法 | 6人 |
導尿 | 4人 |
その他 | 43人 |
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詳細については、以下からご覧ください。