視覚聴覚二重障害の医療

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)

厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)
(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

チャージ症候群

疫学

10,000-12,000出生に1人の頻度とされています。耳介の変形や聴覚障害は85-90%、目の異常は80-90%に合併すると報告されています。

原因

主として8番染色体8q12.1に存在するCHD7(Chromodomain helicase DNA binding protein-7)遺伝子のヘテロ変異によって、視覚、聴覚をはじめ多系統にわたる障害が発症しますが、詳しい機序は不明です。

視覚障害の自然歴

眼の先天異常として、網脈絡膜コロボーマ(部分欠損)を約95%に認め、大部分は両眼性です。他に小眼球・小角膜、眼瞼下垂、水晶体異常、胎生血管系遺残をきたす例が多いです1)。視覚障害の程度は先天異常の程度によって異なります。また併発症として網膜剥離、白内障、緑内障を生じると高度の視覚障害をきたします。

  • (1)眼先天異常と視覚障害
    コロボーマは眼発生初期(胎生6~7週)に胎生裂の閉鎖不全によって起こる先天異常です。虹彩、水晶体、網膜、脈絡膜、視神経まで様々な程度の欠損が眼球の下方に起こります。胎生裂閉鎖不全が広範囲に及んだ場合、小眼球・小角膜、前眼部形成不全、胎生血管系遺残などの先天異常を合併します。
    本疾患では両眼に広汎な網脈絡膜コロボーマをきたすのが特徴です。したがって下方の欠損部にあたる上方視野が欠損します。視力障害の程度は、網膜中心の黄斑部の形成の有無によって決まります。黄斑部が欠損していれば視力0.08以下、部分欠損では0.1~0.4、欠損がなければ0.5以上の視力を得ることができます。左右差がある場合には、悪い方の眼は高度の視覚障害(0.02以下)となります。また視神経と黄斑部を含む広汎なコロボーマがあり、小眼球を合併する場合には高度の視覚障害(0.02以下)となります。
    視力、視野障害のほかに、羞明(まぶしさ)、コントラスト低下、立体視障害などの視覚障害をきたすことが多いです。

  • (2)自然経過と併発症
    視機能は8歳頃までに発達します。以降は保有視機能を維持することができますが、学童期以降、成人期に併発症をきたすと視機能が悪化します。難治性の網膜剥離をきたしたり、緑内障が進行すると光覚を失います。

聴覚障害の自然歴

側頭骨CTでは中耳奇形、顔面神経の走行異常、内耳窓の狭窄または閉鎖、蝸牛低形成、半規管低形成、および蝸牛神経低形成が報告されています2)。このため、難聴は中等度~重度まで様々であり、さらに伝音難聴、感音難聴および混合難聴を認めます。滲出性中耳炎の合併もしやすいため、それによる閾値上昇もたびたび認められます。

眼科診療の注意点

全身的な管理と併せて、視覚障害に対し乳幼児期から継続した診療が必要です。診療の注意点を以下に挙げます。

  • (1)眼先天異常の評価
    出生時もしくは乳児期に眼科的検査を開始するのが望ましいです。コロボーマの範囲、他の眼先天異常の有無、左右眼の程度差について、前眼部から眼底まで詳細に検査します。とくに黄斑部や視神経の形成の有無、小眼球の合併の有無は、視機能の予後に大きく影響するため、注意して観察します。生後3カ月頃になると、固視・追視反応がみられ、乳幼児用の視力検査(視覚誘発電位、PL法など)を行うことが可能となります。

  • (2)保有視機能の発達を促す
    眼先天異常の見立てによって、保有視機能を評価することが出来ます。早期からロービジョンケアを開始して、視機能の発達と活用を促すことが重要です。コロボーマによる上方視野欠損があると、顎上げや背這いをして見ようとする仕草が目立ってきます。患児の下方から物を見せるように工夫する必要があります。また屋内外で、羞明を防止する工夫も必要です。
    2~3歳以降、強度近視などの屈折異常を合併することが多いため、補聴器と併用できるような眼鏡を作成し、常用させて保有視機能の発達を促します。黄斑部の形成がよい場合には、積極的に弱視治療を行います。視覚障害の程度によって、就学前から拡大鏡や単眼鏡などの光学的補助具の選定や使用訓練を行います。

  • (3)併発症の予防
    学童期以降、一旦獲得した視機能が損なわれないように、定期的検査を継続し、併発症の予防と早期発見に留意します。眼球打撲をきたす激しい運動は控え、必要に応じて保護眼鏡や遮光眼鏡を紹介します。

耳鼻咽喉科診療の注意点

  • (1)早期診断が遅れやすい。
    全身に合併疾患を認め、呼吸症状がなかなか安定しなかったり、嚥下障害を伴うと、鎮静下でのABRにもリスクを伴う場合があります。このため早期に聴力検査や難聴に対する介入などが困難なこともあります。なるべく全身状態が改善した時点で、入院中に鎮静を要する検査は行ってしまった方が良いでしょう。また滲出性中耳炎は遷延しやすいため、鼓膜チューブ留置術など積極的に行い、聴力を正確に評価する必要があります。

  • (2)発達の遅れ
    重度難聴に加え発達の遅れがあるため、補聴器の装用効果がわかりにくいです。中等度以上の難聴がある場合、約90%に言語獲得に影響があるとされています。しかし、手話やサイン、絵カードを用いてのコミュニケーションは獲得することができるため、積極的に補聴器装用と療育を行うべきです。

  • (3)コミュニケーション方法
    中等度の難聴であれば補聴器装用効果は良好で、音声を介したコミュニケーションは可能です。しかし、重度の難聴の場合、補聴器装用効果が十分にはあがらないことが多いため、手話や文字、絵など視覚を介したコミュニケーションが必要となります。補聴器の効果が上がらない場合に人工内耳留置術が選択されることもあります。チャージ症候群は内耳低形成や蝸牛神経の低形成を伴うことが多いため、人工内耳留置により小さい音は拾えるようになっても、言葉の聞き取りや音声言語の獲得は改善しないため、視覚情報を併用しながら音声言語習得のための訓練を受けます。

文献

  • 1) Nishina S, Kosaki R, Yagihashi T, et al: Ophthalmic Features of CHARGE Syndrome with CHD7 Mutations. Am J Med Genet A 2012;158A(3):514-518.
  • 2) 佐久間直子、荒井康裕、高橋優宏、他:Charge syndromeの7例の診断と聴覚の検討. Otol Jpn 2013;23:25-30.

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