ピエール・ロバン症候群
疫学
2,000~30,000出生に1人の頻度で出生するとされています。そのうち約半数は、他の合併疾患を伴うスティックラー症候群などを含みます。
原因
胎生7~10週に小下顎症、舌根沈下、気道閉塞、口蓋裂を連鎖性にきたす先天性疾患で、単独または他の症候群に伴って起こります。正確な原因・機序は不明ですが、単独例にはSOX9遺伝子近傍の遺伝子変異によって起こるものがあります。
視覚障害の自然歴
本症はスティックラー症候群、チャージ症候群、トリーチャー・コリンズ症候群などに合併することが多いです。視覚障害の自然経過については各疾患項目を参照してください。
聴覚障害の自然歴
口蓋裂を伴うことが多いため、滲出性中耳炎を高頻度に合併し、軽度~中等度の難聴をきたしやすいです。
眼科診療の注意点
本症を伴う症候群の中には、視覚障害をきたし、乳幼児期から眼科的管理を要するものがあります。早期に眼科的検査を開始するのが望ましいです1)。本症を高頻度に合併するスティックラー症候群は、網膜剥離を高頻度に併発するため注意を要します2)。
耳鼻咽喉科診療の注意点
滲出性中耳炎に伴う聴力低下がみられる場合は、積極的に鼓膜チューブ留置術を行うことが望ましいです。チューブ留置が困難な場合や耳漏などが続く場合は、骨導補聴器や軟骨伝導補聴器などの装用も適応です。
鎮静検査を行う際の注意点
聴力などの評価に鎮静薬を内服して検査することがありますが、小顎と舌根沈下による気道閉塞が鎮静薬により一過性に増強することがあります。鎮静薬を使用したときは、目を離さないように注意が必要です。
文献
- 1) Huang F, Kuo HK, Hsieh CH, et al: Visual complications of Stickler syndrome in paediatric patients with Robin sequence. J Craniomaxillofac Surg 2007;35(2):76-80.
- 2) Antunes RB, Alonso N, Paula RG: Importance of early diagnosis of Stickler syndrome in newborns. J Plast Reconstr Aesthet Surg 2012;65(8):1029-1034.