視覚聴覚二重障害の医療

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)

厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)
(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

養育、教育で大切にしたいこと

子どもたちが抱える困難性

  • (1)情報を得ることの難しさ

    私たちはほとんどの情報を視覚と聴覚から得ています。しかも、何気なく目や耳に飛び込んでくる大量で広範囲の鮮明な情報を意識せずに得ることができますが、盲ろうの子どもたちは、その大部分が得られません。盲ろうの子どもたちが得られる情報は、直接触れるか、保有する視覚と聴覚で把握できる限られた範囲にある不鮮明な情報に限られます。

    また、これらの情報は、一度に取り入れられる情報量が極めて少なく、複数の情報の同時処理が困難なため、情報相互の関係性・因果関係、全体像の把握に多大な困難さを有しています。

  • (2)認識の難しさ

    子どもは、乳幼児期から養育者の表情を見て、声を聞き、やりとりをし、感情の交流をしていく中で、世界を拡げ、さまざまな知識を育てていきますが、盲ろうの子どもたちは、音と光が失われた、あるいはほとんど届かない世界の中で、認識を育てていくことに困難さがあります。

    人や物に名前があること、ひとつの概念を獲得するまでに意図的な働きかけと多くの時間が必要とされます。

  • (3)コミュニケーションをとることの難しさ

    見ること、聞くことに困難さがあるため、音声言語、手話、指文字などのコミュニケーション手段を獲得することに難しさが生じます。既に、コミュニケーション手段を獲得した上で、盲ろうになった場合と違い、先天性の子どもたちが、身振りサイン、触手話など、一人一人のコミュニケーション手段を獲得するまでには、系統的な働きかけと多くの時間を必要とします。

    日常の生活の繰り返しの中で、相手の伝えようとしていることを受け止めること、自分の思いを伝えること、そして、双方向のコミュニケーションをとるまでには、見通しを持った意図的な働きかけと時間を要します。

  • (4)移動することの難しさ

    空間を把握すること、安全に一人で行きたい時に、行きたい所に行くことの難しさがあります。

盲ろうの子どもたちに関わる時に大切にしたいこと

  • (1)人間関係をつくり、心理的な安定を図ること

    声や音、光も届かない、届きにくい世界の中にいる盲ろうの子どもたちにとって、人の存在こそが外の世界に繋がる窓口です。まずは、安心できる関係性づくりが大切で、一緒に楽しむことからはじめましょう。

    そして、積極的に子どもの感情を受け止め、感情を伝え、「楽しいね」「悔しい」といった感情を共有していきましょう。

  • (2)実際の体験を積み上げていくこと

    視覚と聴覚からの情報が入らない、入りにくい中で、得られる情報が限られ、また絶対的な経験の乏しさがあります。当たり前のこと、当然知っているであろうことが分からない、抜け落ちていることが多々あります。

    そのため、概念形成の基盤となる実体験を積みあげていくことを大切にしていきましょう。体験してはじめて、周囲で起きていることが理解できます。

  • (3)子どもの障害の状態に応じた方法で情報を提示すること

    視覚と聴覚の状態に応じて、触覚や嗅覚を活用するなどわかる方法で、必要な情報をわかりやすく一貫して伝えることが大切です。そして、物事の因果関係の理解が進み、行動の切り替えが納得しやすいように、「どうしてそうするのか」の理由も伝えるようにしましょう。

    先天性の盲ろうの子どもたちは、サインや言語によるコミュニケーションがまだ難しい子どもたちがかなりの割合を占めています。その子どもたちにわかる方法での提示を考えていきましょう。

    たとえば、次のような方法があります。

    • 1) ネームサインの活用

      自分が誰なのか、名前の印や合図を決めて、必ずそれを使って子どもに名乗ることが大切です。誰が来たのか、特定できる情報を提供しましょう。個人を特定する物(たとえば、タオル地のアームバンド、ビーズの腕輪、ふわふわの髪飾り、色鮮やかなエプロンなど)を身につけて、判別できるように心がけましょう。決まった物や香りと人が結びつくように、いつも同じ物にしましょう。そして、そばにいるのかいないのかわからないので、そばに来たことをきちんと伝え、そばを離れる時は離れることも伝えましょう。

    • 2) オブジェクトキューやスケジュールボックスの活用

      見通しをもって、安心して活動するために、次の活動や行く場所をかならず予告しましょう。活動の予告、一日の見通しとして、その活動を象徴する物(オブジェクトキュー)やスケジュールボックスを活用します。オブジェクトキューは、子どもにとって、活動をイメージしやすい物を使用しましょう。

  • (4)活動の始まりと終わりを明確に、なるべく活動の全過程に関わるようにすること

    いつ始まり、いつ終わったのかが分かりにくいので、それが明確に分かるように、はっきりした合図を決めて子どもに伝えましょう。一緒に活動の準備をすることは、活動の始まりの予告になり、一緒に後片づけをすることで、活動が終わることも理解できます。

    そして、なるべく活動の全過程に関わるようにしましょう。一部分だけでは全体が分かりませんので、どんな簡単なことでもいいので、始めから終わりまで一連の活動に取り組めるようにしていきましょう。その時に、「いや」「やりたくない」も選択肢の一つであり、そこがコミュニケーションの糸口にもなります。

  • (5)子どもにとって「意味のある」興味関心のあることから出発すること

    視覚と聴覚からの限られた情報と経験の圧倒的な乏しさから、興味関心も限られてきます。その興味関心を意図的に学習につなげていきましょう。子どもたちが、意欲をもって学習に取り組めるようにしていくことが大切なことです。

ホーム > 患者・医療者に役立つ医療関連情報 > 診療マニュアル > 養育、教育で大切にしたいこと

ページ先頭へ