視覚聴覚二重障害の医療

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)

厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)
(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

聴覚障害の遺伝学的診断の伝え方

聴覚障害と遺伝的原因

言葉の発達やコミュニケーションに重大な支障を生じる小児難聴患者の約50%は、遺伝的原因によるものです。加齢、騒音、薬剤、中耳炎などの原因が判明していない成人難聴患者でも、遺伝的原因による場合が多いことがわかっています。遺伝性難聴は、遺伝子の変異(疾患を起こす変化)によって起こります。原因となる遺伝子と変異はとても多くあり、それぞれに症状の特徴があります。遺伝性難聴の症状の特徴を大まかに分けると、聴覚障害のみを呈するタイプ(非症候群性難聴)と、聴覚障害以外の症状を伴うタイプ(症候群性難聴)があります。症候群性難聴には視覚聴覚二重障害の原因疾患(盲ろうの原因疾患)も含まれます。さらに遺伝形式によって常染色体劣性遺伝、常染色体優性遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝に分けられます(図1)。

よくある誤解

遺伝というと、家系に同じ疾患をもつ方が複数いる、次の出産や次の世代でも同じ疾患もつ方が生まれるという認識されがちですが、実際はそうでない場合も多いのです。そのため、家系内に誰も同じ疾患の方がいなくても遺伝的疾患の可能性は十分ありますし、遺伝的疾患の方がおられた場合でも次の出産や次の世代には疾患が生じない可能性も十分あります。この点を誤解してしまうと、誤った判断で身体的負担、心理的負担、経済的負担などが増すため注意が必要です。

遺伝学的検査と遺伝学的診断について

遺伝性疾患の可能性がある患者さんに対して、その遺伝的原因を検査して原因遺伝子と変異を明らかにすることを遺伝学的診断といいます。この時に行う検査を遺伝学的検査と呼び、体重に応じて4-15ccの通常の採血をして、血液細胞のDNAの配列を調べることが一般的です。そして、患者さんのDNA配列と、健常者の標準的なDNA配列を比較して、異なる配列の中から難聴あるいは視覚聴覚二重障害の原因となる配列の変化を見つけます。

遺伝学的診断の目的と意義

医療施設の診察で聴覚障害あるいは視覚聴覚二重障害が見つかると、なぜこのような疾患になったのか、症状は今後どうなるのか、有効な治療法があるのか、遺伝するのかなどの不安、疑問が生じます。そのような不安、疑問に対してより正確、適切に応答できるようにするために、遺伝学的診断が役立ちます。これは、疾患の原因遺伝子や変異によって、それぞれ症状、診療効果、遺伝などの特徴があるため、遺伝学的診断ができるとその特徴に応じた診療や生活の選択できるためです。

具体的には、症状がなぜ起きているかを説明し、症状の特徴と将来の経過、予防や治療の方法と効果、他の症状の発症予測と対応方法、血縁者への遺伝などの情報を提供し、それぞれの患者さんにとって最適の選択につなげます。

例えば現在は聴覚障害のみであるが、将来に視覚障害も発症する可能性がある場合に、コミュニケーション手段として視覚情報を利用すると後で困難に直面します。そのため、そのような場合は聴覚を活用したコミュニケーション手段の習得が望ましいと考えられます。

かつては遺伝というと難しい、診療できない、知られてはいけないというイメージを持たれることもありましたが、近年は遺伝学の理解が進み、医療も進歩したため、診療に必要で役立つ情報であるという認識が普及しました。

遺伝学的検査の現状

現在、国内では難聴の遺伝的原因の一部に対しては保健適応の遺伝学的検査がありますが、視覚聴覚二重障害の遺伝的原因に対する保健適応の遺伝学的検査はありません。また、保健検査の対象に含まれていない難聴の遺伝的原因についても、保健適応の遺伝学的検査を実施できません。このため現状では、視覚聴覚二重障害および多くの遺伝性難聴の遺伝学的検査は、研究の一環として実施されています。国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科 / 臨床遺伝センターおよび連携する医療施設では、これらの遺伝学的検査、遺伝学的診断に対して視覚聴覚二重障害の原因遺伝子を含む154遺伝子の検査を確立して提供しています。ご希望のある方は以下の連絡先へご連絡を頂ければ、当院あるいは最寄りの医療施設での診察を手配致します。

152-8902 東京都目黒区東が丘2-5-1
国立病院機構東京医療センター 耳鼻咽喉科 / 臨床遺伝センター
TEL 03-3411-0111 FAX 03-3412-9811

遺伝医療で注意すべき点

遺伝子の情報は膨大で複雑なため、遺伝学的検査を実施しても原因の可能性があるDNAの変化が見つからない場合や、原因かどうかを確定できない場合もあります。具体的には、遺伝学的検査で見つかったDNAの変化に対して、原因として確定、ほぼ確定、不明だが可能性がある、不明などの判定が行われます。そして、これらの評価には各疾患に対する専門的知識、技能、環境が必要なため、専門家のいる施設あるいは専門家と連携する施設を受診することが大切です。

遺伝子の情報は、個人の健康などについての大切な情報を含んでいるため、外部に漏洩することがないように管理、取り扱いは厳重に行う必要があります。このため遺伝医療の専門施設ではそのような体制が要求されます。遺伝医療のために医療施設を受診する際には、この点の確認が必要です。

また、遺伝子の情報から将来に生じる可能性のある症状が判明することがあります。同様に、自分以外の血縁者についても将来生じる可能性を推測できる場合もあります。これらは、治療法や予防法がある場合は大切な情報ですが、十分な対応方法がない場合は精神的に大きな負担となります。たとえ対応方法がある場合でも、それが完全でない場合には情報を伝えるに当たっては十分な配慮と対策が必要です。現時点で講じる対策には、遺伝学的検査前に予想される内容を患者さんあるいは両親に伝えておくこと、日頃から多施設、多職種による支援体制を構築し、医療方針に対するコンセンサスを形成しておくことなどです。先天性難聴児にたいするUsher症候群の遺伝学的検査で、将来の視覚障害の可能性が予測される場合などでは、このような対策が必要となります。

小児難聴の原因別割合 小児難聴の原因別割合

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