視覚聴覚二重障害の医療

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)

厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)
(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

視覚聴覚二重障害児におけるコミュニケーション法と支援について

わが国における視覚聴覚二重障害児の指導・支援の状況

1.視覚聴覚二重障害児の指導・支援数について
わが国における視覚聴覚二重障害児の指導・支援については、公的施設では全国特別支援学校調査(1,025校H29年、星 祐子)で315名(80.8%回答)在籍していると報告されています。さらに、全国児童発達支援センターおよび児童発達支援事業所等調査(4,349事業所、H30年、前田晃秀)では217名(33%回答)在籍していると報告されており、両者を合わせると計532名になります。

これらの調査で、回答を得た範囲では、小学校就学前には、児童発達支援センターなどの療育施設(n=143名)が特別支援学校等教育施設(n=7名)より在籍児が多く、7歳以降は教育施設(n=308名)が多いといえます。そこで、以下に、特別支援学校に在籍する視覚聴覚二重障害児の状況を概括し、コミュニケーション支援の在り方について検討します。

2.感覚器障害の状況
回答児315名の感覚器障害については、難聴が75%、ろうが18%、弱視が58.7%、全盲が26.7%であり、難聴と弱視がそれぞれ過半数を占めていることがわかります。ついで、全盲、ろうの順で低下しました。視覚障害と聴覚障害の組合せについては、弱視・難聴が49.8%、全盲・難聴が14.9%と報告され、補聴器による聴覚活用の適用がある児は64.7%と過半数を占めることがわかります。さらに、弱視・ろうは5.4%、全盲・全ろうは3.5%と報告されています。

また、在籍する障害種別の特別支援学校については、視覚聴覚二重障害児は、主に視覚障害の特別支援学校に17.5%、主に聴覚障害の特別支援学校13.3%在籍し、その他の知的、または肢体不自由特別支援学校に74.9%通学していることが分かりました。

3.現在の感覚器補償の状況
調査の時点で、障害について、何らかの聴覚補償機器を使用している児は、補聴器51.4%、人工内耳5.4%、FM補聴器他4.7%でした。一方で、これらの聴覚に関する補装具を、現在使用していないという児は、34.3%と多数を占めました。また、視覚障害の補装具については、眼鏡が26.3%と最も多く、とくに使用していない児が58.1%と過半数を占めました。聴覚障害のろう・視覚障害の全盲と重度障害児は、順に8%、26.7%ですが、感覚補償機器の適用がない重症児とも考えられます。そこで、補償機器の未使用児から重症児数を減ずると聴覚障害の16.3%、視覚障害の31.4%は補装具装用の必要性が示唆されます。

4.併せもつ障害について
感覚器の二重障害児について、その他の障害を併せ持つ児が84%であり、一方で、感覚器以外の障害を持たない児が16%と報告されています。内訳として、知的障害が72.4%、肢体不自由が63.2%、吸引など医療的ケアの必要な児は43.2%とされており、半数以上で障害の重度化が推定されます。

5.コミュニケーション法
図1に、視覚聴覚二重障害児のコミュニケーションにおいて、児童生徒が発信に用いる代表的なモードを示しました。泣き声・表情など(61.6%)から身振り(36.8%)や実物・絵図版など、言語発達段階としては、前言語期の児が過半数を示していました。一方で、言語期の段階にあり話しことばを用いる23.2%の児では、聴覚音声の使用が認められました。言語期として、さらに手話18.7%、指文字13.7%、普通文字13.7%と視覚系のモードが使われていました。

図1:コミュニケーション:発信モード 図1:コミュニケーション:発信モード

図2に、教師が児童生徒とのコミュニケーションに用い、理解など受信のモードを示します。図1の発信法にほぼ対応しています。児童生徒に直接、触れてガイドするという手法が69.2%と過半数を占め、実物を示す54.6%と、前言語期のモードでの理解の状況と示唆されます。

図2:コミュニケーション:受信モード 図2:コミュニケーション:受信モード

言語期のコミュニケーションモードとして、話ことばによる理解は60%で、手話・指文字の視覚系コミュニケーションは順に27.6%、15.6%で認められました。理解については、前言語期の受信法と、言語期の受信法に双峰化している状況が推測されました。

視覚聴覚二重障害児のコミュニケーション法

視覚聴覚二重障害児の発達および障害状況を踏まえて、コミュニケーションと言語獲得に関する支援指導課題の設定については、感覚器の障害状況の組合せ、さらに併せ持つ障害により多様になりますが、以下に主要な視点を示します。

1) 視覚聴覚二重障害児で、弱視・難聴が過半数を占め、聴覚では補聴器や人工内耳により音声と聴覚の活用を促します。視覚障害については、眼鏡、杖、義眼などの適応を検討し、限られた視野で手話・ジャスチャーや、大きめの文字などを使い、保有する感覚を最大に活用します。

2) 視覚聴覚二重障害に知的障害を併せ持つ児が72.4%と多く、感覚器の障害程度に関わらず、基本的な外界認識・他者認識の形成を配慮したコミュニケーション関係の基盤つくりを重視することが重要になります。全盲ろう児では、乳幼児初期に、歩行・睡眠・摂食・排泄・身辺自立など基本的生活動作・習慣の形成を進めます。養育時には、直接、触れ合い、身振りや実物などの前言語的手段を用いて、人との愛着・交流を楽しめる関係をつくります。歩行・動作・接触等は、環境や事物、人との関係把握に重要であり、大人が積極的に介入して自由な活動を促します。

3) 一方で、感覚器障害の他には重複する障害をもたない児童生徒は14%在籍し、聴覚音声・手話・点字等コミュニケーション法への移行により、書記リテラシ―獲得に向けた一貫した教育指導により、発達の可能性を追及することが重要であり、個に応じた適切な選択が必要とされます。
言語シンボルの獲得やコミュニケーション法の形成には、先に発症した感覚障害の活用指導が必要です。ろうベース盲ろう児の言語獲得では、実物等の認知から、抽象化するオブジェクトキューや身振りサイン、さらに手話へと、段階的に高次のコミュニケーション法を形成します。盲ベース難聴児では、補聴器による聴覚音声の活用を支援します。補聴や視覚活用ができない場合には、年長時期に点字筆記や指点字などへ移行するよう指導を行います。

4)言語獲得によって、小児の思考・記憶・認知など高次の活動が形成されます。そこでコミュニケーション場面で体験や実物を題材に触察などで概念を形成し、サイン等と対応させて、生活場面での語彙の獲得等の習得を図ります。視覚障害教育等の特別支援教育で蓄積された教育手法を用いて、文・談話・書記言語へと体系的に言語獲得を進めます。

5)初期コミュニケーション行動の支援の基本的姿勢:先天性の盲ろう児や全盲ろう児、他障害を重複する児の認知コミュニケーション発達の支援では、まず、大人と子どもが一体となって活動をする段階(a co-active stage)から、大人が子供の横に並んで、活動を共にする段階(the co-operative stage)、さらに、子供が一人で活動をする(the reactive stage)段階へ、徐々に発達を支援し、自立的な行動を形成し、活動の動機付けと幼児の有する外界への興味と学習力を育成する、基本的姿勢が重要と指摘されています。

6)視覚聴覚二重障害児の教育支援に関わる専門性の向上にむけた教員の研修課程の重要性が示唆されます。

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