視覚聴覚二重障害の医療

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)

厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
日本医療研究開発機構(AMED)
(難治性疾患実用化研究事業)
視覚聴覚二重障害の医療

先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

就労の実態と支援

  • (1)盲ろう者の就労実態

    全国調査によると、回答のあった18歳以上65歳未満の盲ろう者676名の平日日中の過ごし方は、「家庭内で過ごす」が55%と最も多く、正職員として就労が8%、正職員以外での就労が7%、自営業が6%という結果になっています(図1)(社会福祉法人全国盲ろう者協会「平成24年度盲ろう者生活実態調査」)。働き盛りの世代であっても、就労している人はもちろん、日中活動のための福祉サービスにすら繋がっている人が少ない状況です。

    図1 18~65歳の盲ろう者の平日日中の過ごし方 図1 18~65歳の盲ろう者の平日日中の過ごし方

    また、盲ろう者の過去と現在の職業を調べた別の調査では、過去においては、「会社員・公務員・団体職員等のサラリーマン」をしていたという割合が43%と多かったものの、現在では4%と大幅に減っていました。その一方で、「無職」の割合が過去は7%であったものの、現在は51%と大幅に増えています(図2)(社会福祉法人全国盲ろう者協会「平成17/18年度盲ろう者生活実態調査」)。

    図2 盲ろう者の過去と現在の職業 図2 盲ろう者の過去と現在の職業

    これらのことから、一般就労(労働契約を結び企業や公的機関などで働く)はもちろん、福祉的就労(福祉サービスの一環として「就労」する)も含めて、困難な状況にあると考えられます。

    そのような状況の中で、少しでも就労の可能性を広げるにはどうすれば良いのか、一般就労、福祉的就労、自営の3つに分けて説明します。

  • (2)一般就労

    一般的な求職活動においては、民間企業であれば、ハローワーク(公共職業安定所)や学校、情報誌等を通じて、情報を集め、採用を申し込むという流れになります。盲ろう者についても、そのような方法で就労を目指すこともひとつの方法ですが、障害者の就労を支援する様々な専門機関・制度や盲ろう者の日常生活を支援する機関・制度を活用していくことで、就労への可能性を高めることができます。

    • 1) 障害者就業・生活支援センター、障害者就労支援センター

      障害者の就労支援機関や制度は多様かつ複雑で、どのように機関・制度を選び、活用していけばよいか、わかりにくい面があります。それらの機関や制度と連絡調整しながら、身近な地域で障害者の就労を支援する機関が「障害者就業・生活支援センター」(都道府県設置)、及び「障害者就労支援センター」(市町村設置)です。

      この2つのセンターの役割はほぼ同じです。身近な地域において、障害者に対し、就業や生活における一体的な相談支援を提供することを目的としています。必要に応じ、ハローワークや行政機関、就労移行支援(職業訓練)事業所、障害者職業センターといった様々な関連機関との連携を図りながら、支援を進めていきます。

      相談や情報提供、他機関との連携支援のほかにも、必要に応じ、就労のための基本的なスキルの訓練や就職活動の支援(ハローワークへの同行・面接の練習・履歴書作成の支援・面接への同行など)などの支援も提供します。

      また、就労後も職場に定着できるように、面談や訪問による障害者本人へのフォローアップや職場への助言なども行います。

    • 2) 盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業

      移動やコミュニケーションを支援する通訳・介助員を派遣します。

      都道府県・政令指定都市・中核市が実施主体となり、盲ろう者団体や聴覚障害者団体等が事業を受託し、運営しています。

      自治体により、利用できる内容は異なります。通勤、就職説明会や就職希望先との面談等の通訳・介助にも利用できる場合があります。就労そのもの(働いている最中の支援)には、ほとんどの自治体では利用できません。

      また、年間一人あたり利用できる時間数に制限があり、全国平均で年200時間程度です。自治体ごとにばらつきもあり、最も多い自治体で1000時間を越え、少ない自治体で100時間に満たない状況です。

      上記のことから、自治体や受託団体等から、利用可能な内容や時間数等の情報を得たうえで、活用の可能性を検討する必要があります。

  • (3)福祉的就労

    一般就労が難しい場合、「就労継続支援事業」という福祉サービスを利用し、「就労」をする方法があります。A型とB型の2種類があります。盲ろう者を対象とした就労継続支援の事業所は全国に数カ所しかなく、多くの地域では、盲ろうに特化していない事業所を利用することになります。

    • 1) 就労継続支援A型

      一般就労には結びつかなかったものの、雇用契約に基づく就労が可能な障害者を対象としています。実際の業務(事務作業やレストランでの調理・接客、封入や部品の組み立てなど)を通じて、一般就労のための職業能力の向上を図ることを目的としています。

      雇用契約を結ぶため、原則として各都道府県が定める最低賃金以上の賃金が得られること、サポートする職員が常駐していることなどがメリットです。ただし、事業所によって、業務や支援の質にばらつきがあるとも言われています。利用にあたっては、事業所で行われている業務や職場の雰囲気などを事前の訪問などで把握しておくことも重要です。

    • 2) 就労継続支援B型

      一般就労も就労継続支援A型の利用も難しい障害者を対象としています。雇用契約をするA型に比べると、平易なものやノルマが緩やかな業務(部品加工や手工芸など)が多い傾向にあり、事業所によっては、「就労」より「日中活動」や「居場所」としての役割を重視しているところも少なくありません。

      通所日数や作業工数に応じて、工賃を受け取ることができますが、平成28年度の実績(厚生労働省調べ)では、A型は月額70,720円の一方、B型は月額15,295円と、A型と比べて低額になっています。

  • (4)自営

    もともと視覚障害があり、中途で失聴した盲ろう者のなかには、あんま・はり・マッサージ師の国家資格を有し、盲ろうになった後も、その仕事を自営で続けている人もいます。ただし、施術前の問診や施術中に患者が話す言葉を聞き取ることが難しい場合は、患者側に配慮を求めることや盲ろう者本人の家族に協力を求めることなどで、対処をしているケースもあります。

    視力や聴力が残っている盲ろう者の中には、盲学校や就労移行支援(訓練)施設において、あんま・はり・マッサージを学び、国家資格を取得し、就労に至る人もいます(高橋ら「盲ろう者の理療就労に関する研究」)。ただし、学習においても、教員の声が聞き取れないなど、コミュニケーション面での課題を抱えることが多く、受け入れ側の配慮が不可欠になります。

  • (5)就労が困難な場合

    就労の意向があっても、一般就労も自営も困難で、福祉的就労についても受け入れ先がない場合、先述した調査にあるように、家庭内で過ごさざるを得ず、社会的に孤立してしまう盲ろう者も少なくありません。そのため、就労以外の方法で、社会と繋がり、社会的孤立を防ぐようにすることも必要になります。

    • 1) 障害者相談支援事業所

      障害者の福祉に関する様々な問題について、相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービス全般の利用支援、サービスの利用計画の作成支援などを行います。障害福祉サービスの多くは、利用にあたって利用計画の作成やその後の状況観察(モニタリング)が義務付けられており、相談支援事業所はそれらの役割を担いつつ、他の機関と連絡調整をしながら、必要に応じて障害者の相談支援にあたります。

    • 2) 生活介護、地域活動支援センター

      生活介護や地域活動支援センターは、創作的活動、生産活動等の日中活動の機会を提供する障害者向けの福祉サービス機関です。生活介護は障害福祉サービスのなかでも最も多く利用されているサービスで、比較的障害の重い障害者に利用されています。地域活動支援センターは事業内容は様々で、生活介護と同様に日中活動の提供を主とする事業所もあれば、就労継続支援事業所のように福祉的就労に近い作業を提供する事業所もあります。

    • 3) 地域盲ろう者団体

      「盲ろう者友の会」という名称で活動していることの多い地域盲ろう者団体では、定期的に盲ろう者同士が集まる交流会や学習会を開催しています。他の盲ろう者との出会いを通じ、他の盲ろう者と気持ちや生活上の知恵などを分かち合ったりすることができます。

ホーム > 患者・医療者に役立つ医療関連情報 > 診療マニュアル > 就労の実態と支援

ページ先頭へ