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先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版)

視覚聴覚二重障害の診療における環境整備

視覚聴覚二重障害を持つ患者さんにとって、初めての環境でその状況を理解するためには、視覚障害・聴覚障害単独の障害を持つ方に比べて格段に困難が伴う。医療機関を受診された時、診察の流れ、検査の内容、検査結果・今後の方針についての説明を行わなくてはならないが、それぞれの患者さんの視覚聴覚障害の程度に合わせたコミュニケーション手法で、説明内容を理解していることを確認しながら進めていくことが必要である。また、診察時には体に触れることになり、ときに苦痛を伴う検査、処置を行う可能性があるため、安心して医療行為を受けてもらうための特別な配慮が必要である。

視覚聴覚二重障害児/者とのコミュニケーション

1) 基本的姿勢、環境整備

・診療に十分な時間をとる。

・見えにくいこと、聞こえにくいことを医療者が理解し、医療者側のペースでなく、本人のペースを考えながら診療を行う。

・介助者に話しかけるのでなく、患者本人に話しかける

・本人が安心できる環境を作る(まぶしすぎない、暗すぎない、静か、適度な室温)。

・乳幼児期においては一緒にいて安心できる大人や安心できる場所があることが重要であるので、毎回同じ医療者が担当することが望ましい。視覚・聴覚以外の感覚を用いて人を判別していることもあり、いつもと同じ医療者であることが識別できるような服装や持ち物を身に着ける(同じ肌触りの服、マスコットなど)。

2) コミュニケーション、インフォームドコンセント
それぞれの患者さんの視覚聴覚障害の程度に応じたコミュニケーション手段をもちいて説明を行う。

・優しく触れる。早い動きを避ける。

・大きな声で、ゆっくり話す。

・短い文章の手のひら書きで内容を伝える。

・手話、指文字で表した後、再度ゆっくり確認する。

・明暗の状態に留意し、見やすい適度な明るさとなるように明るくしたり、カーテンで遮光したりするなどの配慮を行う。

・できるだけ、対面で話すようにするとともに、注目していることを確認する。

・視野の範囲内におさまるように手話を表出する。

・手話では、手数を少なめにし、区切りがわかりやすいように表現する。

・写真や絵、言葉カードなどを利用し、自分のペースで見れるようにする。壁に貼るとみにくいので、本人が手に取って見えるようにする。

・日によって見え方・焦点などが変わる場合もあるため、見えているかどうか確認しながら診療を行う。

・文字の大きさや色遣いについては、見えやすさ(見えにくさ)を本人と確認する。

・どうすればコミュニケーションしやすいか(見えやすいか)を本人と確認する。

安心して診察、検査、治療を受けてもらうために

・順番が来たとき肩を叩いて知らせる

・検査や診療の流れや、移動の際にはカードを提示したり、診療で使う器具の実物を触らせるなど、見通しが持てるようにする。

・検査や処置の内容を理解しているか確認しながら進める(幼児・小児の場合、保護者だけでなく本人も理解しているかを確認しながら進める)。

・できるだけ、苦痛の少ない方法で検査・処置を行う(ベッドに拘束しなくてもできる処置はできるだけ椅子で行うなど)

・通訳介助員が診察、検査、処置時にも同行できるように配慮する。

・診療の開始や内容、終わりがわかるサインを作る(肩を2回たたく→終わり、など 。家庭、療育機関、視覚特別支援学校や聴覚特別支援学校で慣れているサインがあればそれを用いる)

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